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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)407号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第一、事故発生

一、請求原因一の(一)ないし(四)の事実は当事者間に争いがない。

二、事故態様

<証拠>によれば、本件事故現場は道路の車道部分の幅員が九、一メートル、その両端に各三メートルの歩道の設けられた北東から南西に通ずる見通しの良い直線道路上で、同道路の東南側には柳原中学校があり、その西北には市営住宅が建ち並んでいる場所で、被告山下は加害車を運転して時速約三五キロメートルで同道路を南西へ向け進行し、先行車の約六メートル後方に追従していたが、同被告において事故現場の約三〇メートル先(南西側)に横断歩道のあることを知つていたので、先行車が横断歩道の手前で一時停車するのではないかと考え、先行車の動静にのみ気を奪われて走行していたたため、同道路を西北側より東南側へ小走りに横断しようとしていた被害車(原告こずえ)を右前方五、五メートルの地点に至るまで気付かず、発見後、直ちに急制動の措置をとると共に左転把したが、約五、五メートル進行した地点で加害車の右前側部を原告こずえに接触させて同女を転倒させたこと、一方、原告こずえは遊び友達の高取潤一郎(当時三才)と共に本件事故現場近くの高取方付近で遊んでいたが、市営住宅街より柳原中学校の方へ向けて(西北より東南へ)二人で同道路を走つて横断しようとしたところ、折から進行してきた加害車に接触するに至つたこと(なお右潤一郎も本件事故により受傷した)、がそれぞれ認められ、右認定に反する被告山下久幸本人尋問の結果はたやすく措信しがたい(同被告は被害者らが対向車のかげから突然飛び出して来た旨の供述をするが右はたやすく措信しがたい)。右事実によれば、本件事故は先行車の動静にのみ注意を奪われ、前方左右の安全の確認を怠つた被告山下の過失と、左側の安全を確認せずに道路を横断しようとした原告こずえの過失が競合して発生したものと認められ、過失の割合は、右認定の事実および本件に顕れた一切の事情を考慮して、被告側を九、原告側を一とするを相当と認める。

三、原告こずえの傷害

<証拠>を綜合すれば、原告こずえは、本件事故により頭部外傷、後頭部挫創の傷害を受け、北九州市の関原整形外科に昭和四二年二月四日より同月一六日まで一三日間入院し、退院後も同年三月一日まで通院(実通院日数六回)し、昭和四三年七月に大阪市の北野病院に転院し、同年九月一七日より同月二一日まで五日間入院し、また、同年七月二四日から同年一〇月一八日まで入院期間を除き実通院日数一五日の通院をなしてそれぞれ治療を受け、更に同市円の西淀病院において検査を受けたが、昭和四四年一二月下旬頃において、左後頭部に横に走る約四センチの創痕と、その創痕より下方向に軽度(約二ミリ)の陥没骨折を残し、また、頭痛、後頭部痛、耳鳴、耳痛等の自覚症状を訴えている事実が認められる。被告らは、同原告の左後頭部の陥没骨折は本件事故と因果関係がないとの主張をするが、前掲各証拠とりわけ甲第三号証の一、三、証人榎光義の証言により、同原告が本件事故により後頭部の打撲と創挫を受けその際に左後頭部に右認定の陥没骨折が生じたものと認めるに充分であるから、右主張は採用しない。なお、前記証人榎光義の証言によれば、頭蓋骨の陥没部位が頭頂葉、前頭葉等の部位ではなく、その程度が五ミリ以下で、その態様が複雑骨折に至つていない程度の陥没骨折ならば、通常はてんかん、精神障害、神経症状を残すことはなく、観血的な整復術を施行する必要もないことが認められるので、従つて、同原告の陥没骨折の部位、程度、態様からすれば、身体の完全性が損われてはいるが、陥没骨折によつて、脳の機能に影響を与えたり、将来の労働能力に支障をきたすほどの後遺症は残つてはいないものと認められる。<中略>

(三) 逸失利益

原告は本件事故による後遺症のため、将来稼働可能時期において五〇パーセント程度の労働能力を喪失したと主張するが、原告の後遺症は前記第一の三認定のとおりで、頭痛等の自覚症状を訴えていると共に左後頭部に陥没骨折を残したままであるが、右の後遺症の程度からすれば将来の労働能力に影響を及ぼすことはないものと認められるので、原告主張の逸失利益を認めることはできない。

(四) 慰藉料 金五〇〇、〇〇〇円

前記第一の三認定の傷害の部位、程度、入・通院期間、後遺症の程度その他本件に顕れた一切の事情(但し過失割合の点を除く)を考慮して、金五〇〇、〇〇〇円とするを相当と認める。

(五) 過失相殺と損害の填補

原告こずえの損害額は、以上合計金五五一、〇〇〇円となるところ、前記第一の二記載の如く一割の過失相殺をするのが相当であるから、金四九五、九〇〇円となるが、同原告が被告らより慰藉料として金一八、八〇〇円を受領したことは同原告らにおいて自認しているのでこれを差し引けば、残額は金四七七、一〇〇円となる(被告らは慰藉料として金二〇、〇〇〇円支払つたと主張するがこれを認めるに足りない)。(吉崎直弥)

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